手順書のコピペ運用をやめる|実行できる手順書LC4RIの考え方

夜勤の定型作業で、Excelの手順書からコマンドをコピペしていませんか。1行飛ばした気がして、画面をさかのぼって確かめた経験がある人も多いはずです。

この記事では、手順書を「読むもの」から「実行するもの」に変えるLC4RIという考え方がわかります。結論から言うと、ポイントは手順と実行結果を同じ場所に残すことです。

目次

LC4RIとは?「実行できる手順書」という考え方

LC4RIは、説明文とコマンドを1つの文書にまとめ、その文書から直接実行する運用のやり方です。正式名は「Literate Computing for Reproducible Infrastructure」です。

国立情報学研究所(NII)のクラウド運用チームが、2015年ごろから実践してきました。もともとはJupyter Notebook(文章とコードを1枚に並べて実行できるツール)とAnsible(サーバー設定を自動化するツール)を組み合わせています。

たとえるなら、料理のレシピ本に「このボタンを押すと、この工程が実行される」機能がついたイメージです。読みながら上から順に押していけば、作業が進みます。

さらに押した結果が、そのままレシピの横に書き込まれて残ります。つまりLC4RIは、手順書と作業記録を1冊にまとめるしくみです。

LC4RIを紹介するスライド:2026年9月26日公開

2026年9月26日に、スリーシェイクの加藤泰隆さんがLC4RIを紹介するスライドをドクセルで公開しました。

スライドは、手順書にあたるドキュメントを、いまだにターミナルにコピペして作業している状況を問題として挙げています。そのうえで、加藤さんが作った次の2つのツールが紹介されていました。

  • code-lc4ri:VS Codeの拡張機能として動く版
  • go-lc4ri:画面を使わずに実行できるコマンドライン版

書き方はMarkdown(見出しや箇条書きを記号で書く形式)です。スライドでは、Ansibleのようにコマンドを設定ファイル(YAML)へ書き直す手間が要らず、ふだんの手順書に近い感覚で使える点を特長に挙げています。

スライドでは、LLMを使って手法の評価と追加実装を素早く重ねる進め方や、手順の品質を担保しながら磨いていく考え方にも触れていました。

コピペ手順書の3つの弱点とLC4RIの解決策

LC4RIが解決するのは、コピペ運用で起きやすい3つの弱点です。どれも腕前ではなく、しくみの問題だからです。

コピペ手順書の弱点 LC4RIでの解決
打ち間違い・コピペ範囲のずれ 書かれたコマンドをそのまま実行する
工程の飛ばし 上から順番に実行していく
エビデンス取りが手作業 実行結果が自動で手順の横に残る
Excel手順書からコピペしてターミナルで実行し結果をスクショで貼るいまのやり方と、説明とコマンドを1つの手順書にまとめてその場で実行し結果が横に残るLC4RIのやり方を比べた図
図: コピペ手順書とLC4RIの違い(筆者作成)

たとえば、ディスク使用率を確かめてからログを退避する作業を考えてみましょう。コピペ運用では、結果のスクリーンショットを撮ってExcelに貼るのが定番です。

LC4RIなら、確認コマンドの出力がそのまま文書に残ります。あとで先輩が見返したときも、何を打って何が返ったかが一目でわかります。

NIIが公開しているJupyterの拡張機能には、一度実行したセルを「凍結」して二重実行を防ぐ機能もあります。本番で同じ操作を2回流す事故を、しくみで止められるわけです。

LC4RIが運用・監視の現場で効く場面

運用・監視チームにとって、LC4RIは「引き継ぎ」と「新人教育」で特に効きます。作業の意図と結果がセットで残るからです。

  • 夜勤の引き継ぎ:どこまで実行し、何が返ったかが文書で伝わる
  • 障害時の振り返り:誰がいつ何を打ったかを、あとから追える
  • 新人の学習:先輩の過去の作業記録を、読んで再現できる

NIIの紹介ページでも、作業の理解をチーム内で共有でき、ノウハウの移転につながると説明されています。完全な自動化に頼りすぎず、人が読んで判断できる点を大事にしているのも特徴です。

障害時に何を記録すべきかは、インシデント初動で新人がやる5つのことの記事で整理しています。

筆者の考察:LC4RIの考え方は明日から真似できる

筆者は、ツールを入れる前でも、LC4RIの考え方は今日から取り入れられると考えます。大事なのは道具より「手順と結果を離さない」習慣だからです。

職場でツールを勝手に入れられない人でも、次の3つなら試せます。

  1. 手順書の各コマンドの下に「期待する結果」を1行書き足す
  2. 実行したら、実際の出力を手順書の同じ場所に貼る
  3. 期待と違ったら、その場で止めて先輩に聞く

1の「期待する結果」があるだけで、手順書は確認リストに変わります。違和感に気づく力は、運用エンジニアの市場価値そのものです。

定型の確認作業をAIに任せる流れも進んでいます。ただ、その場合も記録が残る設計が前提です。深夜アラートの一次調査をAIに任せる記事もあわせて読んでみてください。

夜間バッチを「起動・生存・終了・復旧」のどこまで見張れているかを確かめる観点は、バッチ監視は「動いた」では足りない|起動・生存・終了・復旧の4観点で解説しています。

手順書と同じ発想でAIへの依頼を書面にする進め方は、仕様駆動開発(SDD)とは|AIへの口頭依頼をやめる4つのファイルで紹介しています。

まとめ:LC4RIで手順書を「実行と記録の場」にする

  • LC4RIは、説明文とコマンドを1つにまとめ、手順書から直接実行する運用のやり方
  • 打ち間違い・工程飛ばし・エビデンス取りの手間を、しくみで減らせる
  • ツールがなくても「期待する結果を書き、実際の出力を横に残す」習慣は真似できる

まずは、いま担当している定型作業の手順書に「期待する結果」の行を1つ足してみましょう。

参考リンク

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

インフラの運用・構築に10年以上携わり、AWS 認定8資格を持つ運営者です。いまは Claude Code などの AI ツールを日々の作業の自動化に使いながら、これから使う人のための教科書サイトを運営しています。

コメント

コメント一覧 (3件)

コメントする

目次