AIに質問を重ねても答えがまとまらず、気づけば1時間たっていた。先輩に聞けばすぐ済んだのに、と後から思ったことはありませんか。
この記事では、若手エンジニアがAIを使うときに迷いやすい場面と、そこで必要になる「AIを使う力」がわかります。結論から言うと、AIに上手に聞く力より、「何を聞くか」と「誰に聞くか」を決める力のほうが大切になっています。
「AIを使う力」とは?若手エンジニアがZennに書いた3つの気づき
きっかけは、三菱UFJインフォメーションテクノロジーのテックブログとしてZennに2026年10月8日に投稿された「若手エンジニアに必要だと感じた『AIを使う力』」という記事です。
投稿者は、JavaやReactを使った金融系Webアプリの開発に携わる、開発経験の浅いエンジニアです。調査・実装・文章作成・レビューなど、さまざまな場面でAIを使っています。AIを使わない開発に戻したいとは考えていない、と書いたうえで、AIを使って感じたことを3点にまとめています。
- AIは答えを出し続けるので、人に聞く判断が遅れやすい
- AIは実装案を出せても、その設計が本当によいかまでは判断しきれない
- AIを使うほど、要件を理解し、情報を集め、判断する力が大切になる
AIを否定する話ではなく、ふだんからAIを使っている人が感じた「若手が迷いやすいところ」の記録だという点が、この記事の読みどころです。
AIに聞き続けて終わらない理由は「AIが知らない情報」
AIに聞いても解決しないとき、聞き方ではなく、AIが持っていない情報が原因のことがあります。
元記事では、社内固有の仕様やチーム内で決めたルール、資料に書かれていない過去の経緯を例に挙げています。こうした問題はAIに何度聞いても解決しない場合がありますが、AIは次の案を出せるため、「あと少し聞けば解決できそう」と感じて質問を続けてしまう、と書かれています。
運用・監視の現場に置きかえると、わかりやすくなります。たとえば夜勤中に、見たことのないアラートが鳴ったとします。AIに聞けば、一般的な原因はいくつも出てきます。けれども「このサーバーは毎月この時間に重いバッチが動く」といった事情は、チームの人しか知りません。
IPAの「AI利用者のためのセキュリティ豆知識」も、生成AIを「知識豊富だが経験不足の新人」とたとえています。物知りでも、あなたの職場のことは何も知らない新人だと考えると、聞くべき相手を選びやすくなります。
AIの実装案は「動く」けれど「よい設計」とは限らない
AIが出す答えは、動くことは多くても、いちばんよい方法とは限りません。
元記事では、複数人分の入力フォームの例が紹介されています。「追加」ボタンで1人ずつ増やす作りと、先に人数を入れてまとめて表示する作りです。前者は状態の管理やエラー処理、テストがややこしくなり、後者のほうがシンプルだったそうです。ただし使う人の操作性まで考えると、どちらが常によいとは言えないとも書かれています。
もう1つの注意点として、元記事は、参考に渡した過去の資料に問題があっても、AIが気づかなければそれを正しい前提として回答してしまうと書いています。運用の現場なら、たとえば古いままの手順書を渡すと、その古い手順をもとにした答えが返ってくるおそれがあります。
AIの答えは「選択肢の1つ」として受け取り、なぜそれを選ぶのかを自分の言葉で説明できるかを確かめましょう。AIが書いたコードの読み方は、AIが書いたコードが理解できない理由でもくわしく扱っています。
若手エンジニアに必要な7つの「AIを使う力」
元記事が「特に必要だと感じる」として挙げている力は、次の7つです。どれもAIの操作ではなく、仕事の進め方そのものの力だと筆者は考えます。
- ゴールを明確にする力
- 要件を分解する力
- 必要な情報を探す力
- 分からないことを言葉にする力
- 誰に確認すべきか判断する力
- AIの回答に疑問を持つ力
- 設計を選んだ理由を説明する力
元記事では、AIが使いやすかったのは仕様書と実装の比較や議事録からの決定事項の抜き出しなど、「判断基準を渡せる作業」だったとも書かれています。また投稿者は、プロンプトに「足りない情報や判断できない前提があれば、推測せず先に質問して」という一文を加えたところ、前提不足による手戻りが減ったと書いています。Anthropicの公式ガイドにも、AIを「優秀だが、職場の決まりや仕事の流れを知らない新入社員」と考え、求めることを正確に説明するほど結果がよくなる、という説明があります。
AIに渡す情報を整える力は、そのまま人に相談するときの力にもなります。指示の書き方については、AIへの指示が守られないのはなぜ?もあわせて読んでみてください。
筆者の考察:AIを使う力を運用の現場で試す「聞き分け表」
1〜3年目の運用担当なら、まず「AIに聞く・資料を探す・人に聞く」を分けて考える習慣をつけるのがよいと考えます。
7つの力のうち「誰に確認すべきか判断する力」は、迷う時間を減らす効果がいちばん大きいからです。筆者の見立てで、運用の現場向けの聞き分け表を作りました。公式の基準ではないので、目安として使ってください。
| 知りたいこと | まず聞く相手 | 例 |
|---|---|---|
| 一般的な仕組みや用語 | AI | ロードバランサーとは何か、エラー番号の意味 |
| 手順や設定の決まりごと | 社内の資料 | 手順書、構成図、過去の障害報告 |
| 職場だけの事情や判断 | 先輩・チーム | このアラートは無視してよいか、だれに連絡するか |

もう1つおすすめしたいのは、AIに聞く前に「15分たっても進まなければ人に聞く」と決めておくことです。時間で区切れば、AIに聞き続けて抜けられなくなる状態を防げます。先輩に聞くときも「AIでここまで調べた。ここが社内の事情でわからない」と言えれば、相談はずっと短く済みます。
AIに頼りすぎて学びが浅くなる心配については、認知的オフロードとは?で研究結果を紹介しています。
まとめ:AIを使う力は「何を・誰に聞くか」を決める力
- AIに聞き続けて終わらないときは、AIが知らない社内の事情が原因のことがある
- AIの答えは動いても最善とは限らないので、選んだ理由を自分で説明できるか確かめる
- 7つの「AIを使う力」は、ゴール・要件・確認先を整理する仕事の基本の力そのもの
まずは次にAIへ質問するとき、「これはAIが知っている話か、職場の人しか知らない話か」を一度考えてから聞いてみましょう。

コメント
コメント一覧 (2件)
[…] AIの実装案が「動く」ことと「よい設計」であることは別の話です。若手がAIで迷いやすい場面はAIに聞き続けて先輩に聞けない|若手に要る7つの「AIを使う力」でまとめています。 […]
[…] AIに頼る場面と人に聞く場面の分け方については、AIに聞き続けて先輩に聞けない|若手に要る7つの「AIを使う力」もあわせて読んでみてください。 […]