Design Docとは?できる人ほど書いている「代替案と懸念点」

Design Docとは?優秀な人が必ず書く「代替案と懸念点」を新社会人エンジニア向けに解説

設計を任されたものの、何をどこまで書けばいいのかわからない。そう感じていませんか。

先輩から「Design Docを書いておいて」と言われても、テンプレートの空欄を前に手が止まってしまう。新社会人エンジニアからよく聞く悩みです。

この記事では、Design Docとは何か、優秀なエンジニアの書き方は何が違うのか、そして今日から書ける手順までをお伝えします。

結論を先に言います。Design Docの価値は、決めたことを書くことよりも、決まっていないことを書くことにあります

目次

Design Docとは?作る前に不確実性を洗い出す設計文書

Design Docとは、実装に入る前に「どう作るか」を文章にまとめ、チームに読んでもらう設計文書のことです。

目的ははっきりしています。エンジニアのpospome氏は、Design Docを「開発に入る前に不確実性を可視化し、排除するためのもの」と定義しています。

なぜ文章にするのか。理由は、やり直しの重さがまるで違うからです。コードは動かしてから間違いに気づくと、数日分の作業が消えます。文章なら、書き直しは数十分で終わります。

引っ越しを思い浮かべてください。家具を全部運び入れてから「冷蔵庫が入らない」と気づくのと、先にメジャーで測っておくのとでは、かかる手間がまるで違います。Design Docはこのメジャーにあたります。

つまりDesign Docは、書類仕事ではなく、いちばん高くつく手戻りを先に潰すための道具です。

Design Docの役割:作る前に代替案と懸念点を並べて合意する
図: Design Docの役割:作る前に代替案と懸念点を並べて合意する(筆者作成)

なぜ今Design Docが話題なのか?実装が速くなったから

Design Docがあらためて注目されている理由は、実装のスピードが上がったことにあります。

生成AIやコーディング支援ツールのおかげで、コードを形にするまでの時間は短くなりました。そのぶん、ボトルネックが「何を作るか決めること」に移ってきています。

ここが大事なところです。AIは、渡された指示に沿って速く作ります。前提があいまいなら、まちがったものを速く作ってしまいます。

実際に2026年8月、Design Docをテーマにした記事がはてなブックマークで大きく伸びました。同じ時期にQiitaでも、新人が合意を取りきれずに仕様がひっくり返る話が上位に並んでいます。

手が速くなるほど、設計のあいまいさが表に出てくる。それが今の状況です。

優秀なエンジニアのDesign Docは何が違う?3つの共通点

差がつくのは、書いてある内容ではなく、ふつうは省いてしまう部分です。pospome氏は次の3点を挙げています。

  • 代替案: 選ばなかった案を残す。「A案・B案・C案のうち、C案は運用コストが高いので却下」まで書く
  • 懸念点: 残っている不安を隠さない。「ここは自信がないので助けてほしい」と書いてよい
  • 未決定事項: 今は決めないことを、なぜ・いつ・誰が決めるのかとセットで書く

なぜこの3つなのか。どれも、書いた人の思考の深さがそのまま出るからです。代替案の数は引き出しの広さを、懸念点はどこまで疑ったかを示します。

未決定事項はとくに効きます。決めないと決めておけば、実装中に「これ誰が決めるんでしたっけ」と止まる時間がなくなるからです。

料理でたとえるなら、レシピに手順だけ書くのが新人、「この味付けは好みが分かれるので当日決める」まで書けるのが先輩、という違いです。

Design Docは合意を作る道具でもある

もう一つ、Design Docには見落とされがちな役割があります。相手に「決めた」と実感してもらう役割です。

理由は、人は自分の言葉で決めたことしか守らないからです。こちらから「これで進めますね」と宣言しても、相手からすれば止める権利を渡されただけで、決めた覚えはありません。だから後日ひっくり返ります。

先ほどのQiitaの記事では、こうした聞き方が紹介されています。「この内容で確定として進めてよろしいでしょうか」「ほかに気になる点はありますか」。文書を共有したあとに、相手の返事を待つ形です。

Design Docは、この確認をやりやすくします。口頭のやりとりと違い、読み手が自分のペースで目を通し、自分の言葉で返事を書けるからです。

設計を書くことは、責任を一人で背負う行為ではありません。むしろ、チームで背負い直すための手続きです。

新社会人エンジニアのDesign Docの書き方は?A4一枚から

最初から立派な文書を目指す必要はありません。A4一枚、次の5項目だけで十分に機能します。

  • 背景: なぜこれをやるのか。困っている人は誰か
  • やること・やらないこと: 今回の範囲をはっきり線引きする
  • 案と却下理由: 思いついた案を並べ、選んだ理由を一行ずつ書く
  • 懸念点: 自信のないところ、聞きたいところ
  • 未決定事項: いつ・誰が決めるかを添える

書き終えたら、実装を始める前にレビューを依頼してください。ここで指摘が入るほど得をします。文章の直しは安く、コードの直しは高いからです。

そして、この習慣は数年後に効いてきます。書ける人は、任される仕事の大きさが変わっていくからです。

インフラの現場でDesign Docはこう使われている(筆者の実感)

筆者はインフラの設計・構築が本業ですが、この世界には昔から「パラメータシート」という文書があります。設定値を全部書き出す表です。ところが、パラメータシートだけが立派で、「なぜその値にしたのか」「他に何を検討して捨てたのか」が残っていない現場を、筆者は何度も引き継いできました。5年前の設計者に「なぜセッションタイムアウトが300秒なのか」を聞けないまま、誰も触れない設定になっていくのです。

だから筆者は、Design Docの価値は開発だけのものではないと考えています。インフラ側で書くときは、次の3点を必ず入れるようにしています。

  • 可用性と戻し方: 落ちたらどうなるか、変更に失敗したらどう戻すか
  • 捨てた選択肢: 「マネージドサービス案は費用面で見送り」のような1行でよい
  • 懸念点と期限: 「この構成は接続数が増えたら見直しが必要。目安は〇〇」

新人の方に勧めたいのは、いきなり大きな設計文書ではなく、「変更作業のミニDesign Doc」から始めることです。作業目的・影響範囲・戻し方・懸念の4項目をA4半分に書いて作業に臨む。これは上で紹介したDesign Docの縮小版であり、レビューする先輩からの信頼も一気に上がります。迷ったら「SLA(止めてよい時間)・戻し方・影響範囲」の3点が書けているかで自己チェックしてください。

まとめ:Design Docは「決まっていないこと」を書く文書

  • Design Docとは、実装前に不確実性を洗い出し、いちばん高くつく手戻りを先に潰すための設計文書です
  • 差がつくのは代替案・懸念点・未決定事項の3つで、どれもふつうは省いてしまう部分にあたります
  • 文書を共有したあとに相手の言葉で確定してもらうと、あとから仕様がひっくり返りにくくなります

次に何か作る前に、A4一枚だけ書いてみてください。その一枚が、あなたの手戻りをいちばん減らしてくれます。

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設計や合意形成を文章でどう進めるかは、以下の記事もあわせてどうぞ。

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